鉄の救世主(くろがねのメシア)
瞬く間の出来事。

丸腰の豊田は一瞬にして男から拳銃を奪い、無力化させた。

「……っ…」

豊田の顔に、どっと汗が噴き出す。

うまくいったとはいえ、賭けだった。

銃を突きつけられた時の対処法として戦術自衛隊で格闘訓練をした事はあったものの、実戦で試したのは初めてだった。

もし失敗したら、豊田は撃たれていたのだ。

失敗した時の事を思い、彼女は大きく息を吐く。

と。

「撃ってくれ…」

地面に倒れたままの男が、顔を伏せたまま豊田に言った。

「家族が死んで、俺だけ生き残っちまった…もう生きててもしょうがねぇよ…そのまま撃ち殺してくれ…」

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