鉄の救世主(くろがねのメシア)
「ば…」

今度は豊田が激昂する番だった。

「馬鹿言うんじゃないわよっ!」

男の胸ぐらを掴み、引き摺り起こす!

…男は無抵抗だった。

まるで抜け殻のように、呆けた表情で豊田を見る。

その態度が、余計に彼女の怒りを煽った。

「貴方が死んで、家族が喜ぶと思うのっ?自暴自棄になって拳銃盗んで私を撃って、それで亡くなった貴方の家族が安らかに眠れると思うのっ?」

「……」

ツーッ…と。

男の目から涙が零れ落ちる。

男の気持ちは痛いほどわかる。

分かるからこそ、豊田の瞳からもつられて涙が零れ落ちた。

「貴方が生きる事を放棄する姿を見て、貴方の家族がよく眠れるもんですかっっ!」

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