━ Are You Happy ? ━

■喜ばない悲鳴


バスルームに

私の悲鳴が響いた


誰も喜ばない


ただ悲しいだけの悲鳴








みるみるうちに

バスルームの床に赤い水溜まりができた


バスタブの縁に座ってた翔は

そこからずり落ち

床に尻餅を着いた








ガラスの破片を持ってた手は

小刻みに震え

床に破片を落とした


その震えを止めてあげたくて

翔の手をぎゅっと握る








意識ははっきりしてるものの

翔の顔からは色素が抜け

どんどん蒼白になって行く





よく

冷静な判断ができたものだと

振り返ると感心する





急いで服を着て

翔にジーパンを穿かせて


翔の腕を私の肩にかけて

引きずるようにホテルを出て

救急車を呼んだ








ホテルの影に座り込んだ翔の口からは


未だ

ポタポタと血が落ちる





そんな状態なのに


翔は私のことを


シッシ と手で払い


それでも

翔の傍を離れない私の背中を押し


声にならない 声で


“かえれ”





そう言った





救急車のサイレンが


近くに聞こえ出すと


今度はさっきよりも大きな声で





“いけ”





強く背中を押された








こんなに涙が出たのは

子供の頃

以来だと思う


顔をぐしょぐしょにしながら


翔から離れる





だけど救急隊からの折り電で

すぐに翔の元に

呼び戻された



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