忠犬彼氏。
「変な璃子」
変?
ああ、そうだろうね。
「……うん」
「じゃあお大事にね」
彼女は笑って私を見送った。
私は彼女の姿が見えなくなったことを確認すると
街を走り抜けた。
もう誰とも会わないように。
『璃子』
この街にいると、幻聴が聞こえる。
幼き日の私の、幻覚が見える。
「璃子先輩!」
「し、ば……アンタ何でここに」
アンタ、沙耶ちゃんといたんじゃないの?
「先輩と、いたいからに決まってるじゃないですかー!」
「さも当たり前みたいに言うなよ」
でもさ、ほっとしたよ。
この街を一人で歩きたくなかったから。
「先輩はツンデレですねー」
「デレのないね」
それじゃあツンデレじゃないじゃないか
なんて意見は聞きません。
「先輩、俺と一緒に帰ってくれますか?」
バカじゃないの?
「断っても付いてくる癖に」