忠犬彼氏。


もう少しだけ、もう少しだけ甘えさせて……。

あの人が本格的に動き出すまで……傍にいさせてほしい。


「璃子先輩?」

女顔負けのかわいい顔。

「なぁに心配してんの!余計なお世話!
あんたがそんな顔するなって」


――カウントダウンは始まった。

聡真……その恐ろしい名前が、私を苦しめる。

「璃子先輩、顔色悪いですよ?」

「気のせいだから」

「そんなはずないです!」

あんまり大事にしてほしくないんだけどなぁ。

「保健室に、行きましょう!」

私の手を取り、歩き出した。
でも、私は動かなかった。


「先輩!?」

「やめて……っ」

蚊の鳴くような声で凜汰の手を振りほどいた。

「先輩……?」

「ごめ……ん」

「先輩がどうしてもって言うなら無理強いはしません。けど、心配くらいはさせてくださいよ……」

なんでこうも、上手くいかない……。

「覚悟は、したつもりです」

その、迷いのない、曇りを知らない瞳は、私を捉えて離さない。

「りん……」


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