忠犬彼氏。


「先輩にとっての俺は、そんな程度の存在なんですか?」


その程度の、存在。


「そんなわけ……」

そんなことがあるはずがないんだ。

「俺を、見てください」

稟汰のその真剣な目が私を貫く。

「先輩、俺が先輩をどれだけ好きか……わかります?」

息が詰まりそうになった。


まるで、昔の愚かな私の様な稟汰に、言葉を失う。


「名前を呼ばれるだけで、こうして一緒にいるだけで、すごくすごくドキドキするんですよ?」

「稟汰……」


答えてあげなくては、いけない。
答えられないのなら最初から受け入れるべきではない。


それを知りつつも受け入れた私。
結局逃げただけ。



“逃げないで”


まるでそういうかのように稟汰は私を見つめる。


「りん、た……」


彼を好きになれたらどれだけいいのだろう。


「俺の覚悟を、無駄にしないでください……それじゃあ」

稟汰は一度浅く頭を下げて走って行ってしまった。


『お前は汚い女だ』

私は、汚い。

『璃子おいで』

甘く囁くように

アナタは知ってるんだ、私みたいな愚かな女の扱い方を。


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