百もの、語り。

16.無口



……僕、よく無口だって言われるんです。
人と話しても会話が続かないし、
だから友達とかも昔から少なくて……

それによく引っ越ししてたから
馴染めないままで転校するのもよくあって


小学校の時、ある地方に行ったんです。
でもやっぱりそこでも誰とも仲良くなれなくて。

何もする事もないし、
だからいつも公園の
花壇の端に座ってたんですけど
ある日、隣に誰かが座ったんです。

可愛らしい同い年ぐらいの女の子でした。
彼女はマスクをしていて、
一言も喋らなかったので僕は風邪でもひいてるのかなと思いました。


彼女は無言のまま、
僕と自分の間に本を置きました。
一緒に読もうよと言ってるんだと解釈して
僕も無言で、その本に目を通していました

そのページを読み終わって、
ふと彼女の方を見ると彼女は僕を見ていて
その手は本の端だったので、
『めくってもいい?』と
そう聞いてるような気がして、
僕は頷きました。

そうすると彼女はページをめくって、

ただひたすらその繰り返しでした。


帰る時もただ立ち上がって手を振りました
彼女も微笑んで、僕を見送りました。


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