ヒロイン 完
「お、美味しい」


「だろ?」



泉さんのお箸がスムーズに進んでいる。


もちろん私も。



「これ泉さんの手作り……」


「なわけないじゃん」



ですよね。


失礼ですが仕方ない。だって、目の前に並ぶのは料亭並の料理なんですもの。


いったい、誰が?



「逞だよ」



あー、逞さんか。


モグモグとおかずを口に放り込む。



「……って、逞さん?」


「うん」



ニコニコと目の前な並ぶ豪華な料理を口に運ぶ泉さん。


な、なるほど。


だから花柄エプロンだったのね。


花柄だった意味はわからないけど。



「あいつ料理だけは上手いから」



うらやましい。


因みに……。



「私、料理一切できません」


「あ、やっぱり?」



やっぱりって、ソフトに傷つきます。



「大丈夫。俺もできないから」



一人暮らしのあなたは大丈夫ではないんでは?


普段は、どうしていらっしゃるの?


毎回、逞さんが作りに来てる訳ないし……たぶん。


まさか……。



「奈緒ちゃん?」



お箸をくわえたままキョトンとする泉さん。


私は箸を勢い良くテーブルに置きキッチンへと向かった。
< 125 / 221 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop