ヒロイン 完
何やってんだ私。


目の前にいるの、あの子は驚いたように目を見開いていた。



「あ、ごめ……」


「千夏!」



うげっ。


タイミング悪く恭二が登場した。


おせーよ。



「神山?……てめー、何してんだよ」



恭二の低い声がビリビリ私に当たる。


当たり前か。


千夏ちゃんはボロボロで、私はその胸倉を掴んでるもんね。


分かっているのに私の体は言うことをきかない。


やばい。


体、動かない。



「手、離せよ」



ジリジリと近付いてくる恭二。


あー、何でだろ。


走馬灯のように恭二との思い出が頭を過ぎる。


昔は私にだって笑顔を向けてくれていたのに……。


今の彼の顔には、その欠片もない。


私達、友達じゃなかったんだ。って、自分から人間を拒絶してる私が何言ってんだろ。



「待っ……」



あの子の制止も虚しく、私は彼に殴られた。
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