ヒロイン 完
「どうぞ」


「おじゃまします」



彼の部屋は一言で言うと無駄が無かった。


黒で統一された家具が大人というのを醸し出している。


予想外だ。


大学生じゃない。


もっと上だ。



「ソファーに座ってて、すぐ冷やすもの持ってくるから」


「はい」



今、気付いたけど。


顔めっちゃ痛い。


喋るたんびに、ヒリヒリする。


これは結構、腫れてるな。


彼は保冷剤にタオルを巻いて持ってきてくれた。



「ありがとうございます」



それを受け取って頬に当てた。


気持ちいい。



「あ、腕と脚も怪我してるね」



そう言うと今度は救急箱らしきものを持って来た。



「ちょっと滲みるよー」


「……ッ」



ちょっとどころじゃない、すっごく滲みます。


腕と脚に大きい絆創膏を貼られ治療は終了した。


そして私は冷静になった。


私、何やってんだ?



「コーヒー飲めるー?」



キッチンから声が飛んできた。



「はい」


「砂糖とミルクはー?」


「お願いします」



って、だから何言ってんだよ私。



「はい、どーぞ」


「あ、ありがとうございます」



じゃなくて……。
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