ヒロイン 完
連れて来られたのは、マンションだった。


ぼーっとしていたら、おにーさんがドアを開けてくれた。



「すいません」



さり気なく鞄を持ってくれる気遣いに、紳士だと感動した。



「こっちだよ」



手を引かれ足を進める。


私は幼稚園児か。


エレベーターに乗り込むと視線を感じ顔を挙げた。


おにーさんと視線が交じ逢う。


おにーさんは少し笑って私の頬に触れた。


その行動に私の顔が火照るのと細い目が、いつも以上に開くのが分かった。



「頬、痛い?」


「え?」


「泣いてる」



私は自分の手で頬に触れた。


あ、本当だ。


私、泣いてたの?


私、まだ涙でたんだ。


人前で泣くのは、いつ振りだろう。
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