ヒロイン 完
笑っていなかった彼は私を見て目を見開いた。


否、正確に言うならば目が笑っていなかった。


あれは作り笑いだ。


埋もれる私の腕を掴み引っ張り出してくれた。



「おっと……」



勢い余って恭二の胸に突っ伏してしまった。



「イテッ……」


「大丈夫か?」


「うん。ナイスキャッチだ」


「どうした?お前……」



恭二は私を足の爪先から頭の天辺まで見渡した。



「どーせ、似合いませーん」


「え、いや……」



何か言おうとした言葉を遮り言いたいことを、さっさと告げた。



「恭二」


「ん?」


「いつでも私のクラス来いよ。じゃっ」



私は片手を上げ、すぐさその場を去った。



「奈緒ー!さんきゅー!」



大声で言う恭二を恥ずかしい奴と思いながらも私の頬は緩んでいた。


恭二が準備期間、私のクラスに入り度っていたのは自分のクラスが、つまらなかったからだ。


恭二は元々祭り好きなのに可笑しいと思ったんだよなー。


去年だって何だかんだ皆の中心になって騒いでいたんだ。


せっかくの文化祭、恭二にも楽しんでほしい。
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