桜の花びら舞う頃に
着ぐるみを着た由梨は、そっと猫のかぶり物を取る。
現れた由梨は、静かに微笑んでいた。
「由梨……」
悠希は、短く名前を呼びながら近づいた。
由梨も、それに答えるように口を開く。
「━━━!」
しかし、由梨の声は相変わらず聞こえない。
(それでもいい……由梨と、こうしていられるなら……)
すると由梨は、まるで悠希の心を読んだかのように、少し悲しげな表情を浮かべた。
「……由梨?」
その表情に戸惑いを感じた悠希は、由梨に向かって、そっと手を伸ばす。