桜の花びら舞う頃に
よろける由梨をしっかりと抱き止める悠希。


「……いっぱい、話したいことが……あるんだ」


体を震わせる由梨。

悠希の想いを乗せた言葉は、今度はしっかりと音となり由梨の耳に届いていた。


「由梨がいなくなってもうすぐ3年……拓海は小学生になったよ……」


由梨は腕の中で、じっと悠希の言葉に耳を傾けている。


「時は流れて、季節は変わっていくけど……」


由梨を抱きしめる腕に力が入る。


「……でも、俺の心はあの時のまま……今も変わらない」


悠希は上を見上げる。

涙がこぼれないようにするために。

しかし、それでも涙は頬をつたい流れていた。

由梨も、震える悠希の背に手を回し、悠希を強く抱きしめる。


「由梨……ずっと会いたかった……ずっと話がしたかった……」

「悠希……」


抱き合う2人を、一陣の風が吹き抜けていった。


「……良かった」


腕の中の由梨は静かに言った。


「悠希くんがそう言ってくれて、本当に良かった……」


久々に聞く妻の声。

少し幼さを残してはいるが、りんとした澄んだ声……


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