桜の花びら舞う頃に
「ねえっ、気付いてくれたのってば!」


「……えっ、キスがどうしたって?」


「そんなこと、言ってません!」



さくらは、声を荒げる。


「ご……ごめん、熱があるせいか、頭がぼ~っとしてて……」


思わず、言い訳をする悠希。

本当の理由は違うのだが、この場はそう言っておくことにした。


「あ……そうよね……」


しかしさくらは、その言葉を素直に信じ込む。


「ごめんなさい……」


少し、バツが悪そうにうつむくさくら。




(あ……悪いことしちゃったかな……)




さくらのその表情に、悠希の良心がチクリと痛んだ。



「い、いや、大丈夫! 気にしないで!」



そう言って笑おうとした悠希だったが……



「い……、だ……じょ……」



悠希の喉は、またもや声が出なくなってしまった。





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