桜の花びら舞う頃に
「そ、それが、アタシと何の関係が……」


「まだ、わからんのか!」



龍一は、声を荒げて振り返った。


「大崎グループは、医療界にも進出しようというのだよ」


窓からの日差しが、龍一の姿を照らし出す。

それはまるで後光のようで、、エリカは思わず顔を歪めた。



「……アタシの気持ちは、どうなるのよ!」



その強い光に負けぬよう、エリカは口調を強める。

しかし、龍一は物怖じするする素振りも見せない。



「会社のためだ、仕方がないだろう」



眉1つ動かさない龍一。


「そんなことのために、アタシを……」

「そんなこと……?」


その瞬間、龍一の目が鋭く細くなった。


「ならば、お前は大崎の傘の下から出て行けるのか?」

「……そ、それは」

「今、お前が好きなこと出来るのは、全て俺という後ろ盾があるからではないのか?」

「……っ」


その通りだった。


大崎の力がなければ、エリカはただの生意気で派手な女でしかない。

それを一番わかっているのは、他ならぬエリカだった。



何も答えられないエリカを、龍一は見つめる。


「……そういうことだ」


そして、龍一はレストランに向かって歩き出す。

すれ違いざまに、無言でエリカの肩を叩く龍一。




エリカは、歩き去る龍一の背中を見つめることしか出来なかった……













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