桜の花びら舞う頃に
兄の龍一とホテルの通路で会話した後は、津上と中庭を散歩しながら会話をした。


会話の内容は、日本の医療のことから、理想の家庭像まで様々。


しかし、興味のないエリカは全て上の空だった。





アタシには、悠希がいる!





そう思うエリカ。





しかし……





『ならば、お前は大崎の傘の下から出て行けるのか?』





と、いう龍一の言葉は、エリカの心に深く刻まれていた。



大崎の庇護がなければ、自分には何も残らない。



部屋も


服も


仕事でさえも



全て、大崎の力により与えられたものだった。




今までは、そのことに不満や疑問を持つことはなかった。






しかし━━━





悠希と出逢ってしまった今……


そして、政略結婚をさせられそうな今は……


それは、エリカの心を強く締め付けてくる。



「与えられた自由なんて……」



エリカは、寝返りを打った。




西側の窓から入り込む赤い日差しは、エリカの心を慰めるかのように、そっと照らしてくれた……










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