桜の花びら舞う頃に
「さくらちゃん、俺……」

「……あのね、悠希くん」


話し始めた悠希をさえぎり、さくらは口を開く。


「さっきのエリカって子の言葉……気にすることないと思うの……」


さくらは、空を見上げながらゆっくりと言う。


「……それだけ、素敵な恋愛をしていたってことだもの! 本気でその人を愛していたってことだもの!」


「……さくらちゃん」


「今は、癒やしの時なのよ。傷が癒えたら……またきっと歩き出せるから」


さくらはそう言って、悠希に優しい笑顔を向けた。


「……だから、もう気にしないで。悩まないで」

「……さくらちゃん」


さくらの言葉で、悠希は胸のつかえが取れた気がした。

心が少し軽くなった気がする。


「ありがとう、さくらちゃん」


さくらは優しく微笑んだ。

悠希も微笑みを返すと、さくらが持ってきてくれたウーロン茶を口に含む。

温かいウーロン茶をノドに流し込むと、心と一緒に体も芯から温まる感じがした。


ほっと一息つく悠希。





2人の間に、静かな空気が流れる。

壁を背にし、並んで座る2人。

どちらから話すこともなく、ただ夜空の星を眺めている。

先ほどの店内の喧騒が遥か過去に思えるほど、落ち着いた心地よい空間がそこにはあった。







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