青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―


(タコ沢の奴。タコってあだ名をつけられたことに、まだ根に持ってるんだよな)

 それの原因は俺とヨウだったりするんだけど、「タコ沢」と名づけたのはヨウだ。
 だからってわけじゃないけど、ヨウを追い駆けまわしてほしいんですけど! 確かに「タコ」なんてあだ名は屈辱かもしれないけどさ。けどさ。俺が喧嘩できないことはタコ沢だって分かってるじゃんかよ!
 タコ沢は良くも悪くも真っ直ぐ、根性ある不良だから正々堂々と雪辱を晴らすために俺達に勝負を挑んでくる。
 舎兄のヨウの場合は腕っ節があるからどうにでもなるけど、まーったくもって喧嘩のできない舎弟の俺はこうして逃げるしかない。

 おっと“舎弟(しゃてい)”と単語を出した時点で簡単に説明しなければなるまい。

 あれは一年前。
 この高校に進学して、間もなくのこと。
 俺はとある事故、いやいや不慮の事故? ……とにかく事故を起こしてタコ沢のこと谷沢元気(たにざわげんき)をチャリで轢いてしまった。

 これだけ聞くとチャリに乗っていた俺が悪いんだけど、まあ聞いてくれ。
 タコ沢は道のど真ん中で不良と喧嘩をしていたんだ。ど真ん中で。だから俺は悪くない!
 さらに、全然憶えていないけど、俺がタコ沢を轢いたことで彼奴(きゃつ)に絡まれていた不良を助けたらしい。うん、憶えていないんだけど助けてしまったらしい。

 その助けた不良こそ、後に俺の舎兄となる荒川庸一(あらかわよういち)だった。
 荒川のことヨウは学校一恐れられているヤンチャなイケメン不良。その美貌はなかなかのもので、女子達から黄色い悲鳴を浴び、男子には内心で舌打ちをされてしまうような容姿を持っている。俺も何度舌打ちをしたか!
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