青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―

説明役に抜擢された俺は(あんまこの役回りはしたくなかったんだけどさ)、まず自分の任務の報告をした。

結果は惨敗、俺もタコ沢も発って早々奇襲を掛けられた。

自分の任務をこなし時間なんて爪先もなかったと告げ、真っ当できなことを真摯に謝罪。

次いで執拗に追い駆け回されたこと、逃げ惑っていたこと、そしてタコ沢の考えを順序良く説明していく。
 
最後にあくまで仮説だと付け加えて、自分達の身の上を報告した俺は聞こえてくる二人の喧嘩に耳を傾けた。


「俺達は高架橋から飛び降りて川に逃げた。そこから大回りして、此処まで戻ったわけだけど、途中追っ手に見つかって全力疾走していたんだ。
ヨウ達に連絡できなかったのは、些少の嫌な可能性に懸念を抱いたから」


あんまり浅倉さん達のチームメートの前じゃ言いたくないけど、俺達の受けた奇襲は出来過ぎていたんだ。

あれほど注意を払っていたにも関わらず、俺とキヨタなんてパッと見地味そのもののナリにも関わらず、暮夜の刻に迷う事無く奇襲を掛けてくるなんて出来過ぎている。


「申し訳ないことに、ほんっと何も出来ないまま、駅に到着して間もなく奇襲を受けちまってさ。タコ沢も散々追われちまってさ。どうにか合流はできたんだけど…、散々だったよ。

ごめん、ヨウ。あそこまで啖呵切っておいて」


「馬鹿、テメェ等が無事でなによりだ。下手に深追いしなくて良かった。テメェ等の選択は賢かったよ」


大きな安堵を見せ、柔和に綻ぶヨウは賢い選択だったと繰り返した。

仲間の無事が一番だと口にする舎兄は、「それにしても」眉根を寄せて他の仲間の反応を窺った。

思いのほか、皆、冷静な眼でリーダーの視線を受け止めている。

浅倉さん達のチームメートもわりかし冷静だから俺自身ホッとする。

こういう意見によって対峙するんじゃないかって怖じていたけど杞憂だったみたいだ。


さすがは浅倉さんを支えている面子と言ったところ。


「ありえなくはない、な。楠本の考えそうなことだ。あいつ、榊原の悪知恵はしっかりと受け継いでいるし」


重々しい空気を裂いたのは蓮さんだった。

あいつの悪知恵を受け継いだ楠本なら、そして自身が経験したことなら、仕返しとして使われる手だと踏んでもおかしくはない。

険しい顔で唸る蓮さんに便乗したのはシズ。
 
「まるで“漁夫の利作戦返し”の二の舞だな」

欠伸を噛み締めながら意見した。
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