青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―


「なあ…ヨウ」

「ん?」


肩を並べて佇むリーダーに話を切り出す。

自分は今の生活のままがいいのだ、と。

親戚を巡ってはいるけれど、通う高校は変えないつもりだし、なるべく自分の住んでいる地域から出るつもりはない。

この生活が気に入っているから。

家族のことは置いといて、この生活がとても気に入っている。


「だから…、こんなことになっても、自分…が可哀想だとは思ってない。現状に…、腹は立つが…。お前等とは馬鹿騒ぎ…しておきたい、し」

 
「楽しい…んだ」笑うシズに、「そうか」ヨウは俺もだと同調、躊躇いがちに頬を崩していた。
 

「シズ。今、辛いか?」

「…いや辛くない。…もう…、親のことで辛いと思う…のを、忘れてしまった…。
だから辛くない。お前等もいるし…、どうにかなると思う」

「……、ああ、そうだな。俺もテメェいねぇとツマンネェや」


テメェってゼンッゼン喋るタイプじゃないけど、いねぇとツマンネェ。

ヨウの言葉一つひとつに救われる自分がいる。
誰かに必要とされている、その事実が純粋に嬉しかった。
 

「ああいうオトナには」なりたくねぇよな、ヨウは遠ざかって行く愛人達の背を見つめて意味深に吐息。


シズは頷く。
自分の親のようにだけはなりたくないとも口ずさむ。

軽はずみだけで生きる人間だけには絶対になりたくない。


どんな末路が待っているか、嫌でも分かっているから。
 

じゃあ自分はどんなオトナになりたいのだろうか…、オトナになんてなりたくない、なんて片隅で思う。


オトナになったら今のように、皆で馬鹿騒ぎする機会も減るかもしれない。それはとてもとても寂しいものだ。


そう思うと、やっぱり少しだけ辛いかもしれない。親以外のことで辛味を覚える。


「ヨウ…、夢…あるか?」

「いきなり青春くせぇ話になったな。んー…俺を見下している親父を殴り飛ばして、逆に見下し返してやること。あ、これは目標か?
とにかくあいつよりもぜぇってぇ笑って生きるって決めてるんだ。シケたオトナにはならない」
 
< 324 / 804 >

この作品をシェア

pagetop