青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―


「テメェは?」

即答するヨウが視線を流してきた。
 
「あったかい家を持つこと…だ」

壊れない家が欲しい…、寝る場所に困らない家が欲しいんだ…、シズの夢を聞いたヨウは笑いもせず、相槌を打って首を鳴らした。


「んじゃ、余計親達より笑って生きらねぇとな。
あんな辛気くせぇオトナにだけはならねぇって此処で誓うぜ、俺。
そういうオトナになってたら、テメェ、ツッコんでやってくれよ。あの時の誓いはどーしたよってな」


さり気なく長い付き合いになることを垣間見せてくれるヨウに、目で笑いシズは頷いて見せた。


その約束と誓い、憶えてやっておこう。

オトナになった時、そのことについてヨウと笑いながら語れたら良い。



「あ。そういやケイ…、やっべぇな置いてきちまったけど。携帯に連絡してみっ「ひっでぇええヨウにシズ! 俺を荷物番にするなんて酷過ぎるんだけど!」



丁度良いタイミングでケイが後を追ってきたらしい。
 
揃いも揃って酷いと駆けて来るケイは、シズの荷物を持って二人の前で立ち止まる。

大層重そうな荷物を持って全力疾走してきたのだろう。息切れの激しさに伴って汗だくだ。

ご苦労さんと能天気に笑うヨウは「チャリは?」と指摘。


「あ゛」ケイは顔を強張らせた。

チャリはアパート前だっ、また取りに行かなきゃなんねぇ、嘆いてその場にしゃがみ込む。


「ははっ。どんまい」

「どんまいじゃないって! もぉおお、なんだよこの災難!」
 
 
二人のやり取りに微苦笑していたシズだが、ふと視界の端に人影が映って視線をそちらに向ける。

愛人達とは反対側の道に見えた人影、遠ざかっている姿に見覚えがあり、シズは思わず曲がり角から飛び出してしまう。


電信柱の陰向こうに見える、若作りをした化粧に明るめの茶髪。
ウェーブの掛かったロングヘアに、よれたカーディガン。


―…あれは自分の母だった。

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