青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―

 
結局、ラブになるだのならないだの、イケメンがするとキャラが崩壊するだのしないだの馬鹿な会話をしてその時間は終わっちまう。


なんの解決策も出ないまま、真面目に午前授業を受けた俺とヨウは三日目の気鬱な昼休みを迎えるわけなんだけど、ちょっち変化が訪れた。


それは俺の携帯による変化だった。

メールが来ていることに気付いた俺は、ディスプレイを開き、送信者に瞠目。中身を読んで、静かに携帯を閉じた。


体育館裏で飯を食うのが日課になっているから、ヨウは当たり前のように俺を呼んで皆のところに行こうと誘ってくる。


「ごめん」


俺は先に行って欲しいと両手を合わせて頼んだ。

なんでだと瞬きする相手に、カレカノのノロケを聞きたい? それでもいいなら傍にいてくれても構わないけど、ぶりっ子風にウィンクする。


俺が彼女と連絡を取るのだと察したヨウは冗談じゃないと肩を竦め、先に行くからと片手を挙げて教室を出て行く。


完全に背を見送り、姿かたちがないことを確認した俺は携帯を片手に廊下へと出た。
 

向かう先は駐輪場。途中で缶緑茶を入手し上履きのまま駐輪場まで赴いた俺は、校舎の壁に寄りかかり、ジベタリングしている相手に苦笑を零す。


「待たせたか?」


声を掛けて缶を放る。

受け取ったそいつは、「べつに」ずっと此処でサボっていたし、と言葉を濁した。 

金髪をそよ風に揺らしているモトに、ふーんっと鼻を鳴らし、俺は隣を陣取った。

プルタブに指を引っ掛けて、「それ奢りだから」ありきたりな話題で切り出す。


「なんで緑茶なんだよ」


ジュースが良かったと文句垂れてくるモトに、

「お前がいっちゃん最初に奢ってくれたの」

緑茶だったんだぜ、と俺は微笑した。


だから緑茶にしたのだと肩を竦める。

あんまり緑茶は好きじゃないのに、しかめっ面を作るモトだけど律儀に飲み始めるところからして、好意は受け止めてくれるようだ。


いつもの調子で会話してくるモトに、俺もいつもの調子で言葉を返す。


駐輪場を見つめると、自転車がひしめき合っていた。

校舎の影になっているせいで、俺達のいる場所は日陰。

腰を下ろしている砂利も、土も、背を預けている壁もひんやりと冷えている。


涼しいと思うにはまだ早いようだ。


ちょっと肌寒い。


冷え切った茶のせいで体の熱がどんどん奪われていく。


「いつからいたんだ?」「三限くらいから」「授業は?」「体育」「そりゃサボりたくなるな」「ああ」


弾まない会話を繰り返し、俺達はそこでたむろう。校舎から聞こえてくる生徒の声がやけに遠い。

別世界にいる気分になった。

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