青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―
「あのさ」俺の言葉を遮って、弥生は絶対デートなんだからね! と声音を張った。
両手で拳を作り、明日は喧嘩の話題なんて一切禁止だと喝破してくる。
うっわぁあ…、なんだよ突然。
ゼンッゼン話が見えない。
だけど弥生は興奮気味に捲くし立ててくる。
「明日の放課後はダブルデート! もうこれは決定事項なんだからね! ハジメ、ケイ、明日は覚悟しなさいよ!」
「だ、ダブルデート?!」
なんだそりゃ。
素っ頓狂な声を出す俺に、
「ココロは承諾済みだもん」
フンッと鼻を鳴らして腰に手を当てた。
呆気取られているハジメは、「急過ぎない?」とやんわり意見。
文句でもあるのかと言わんばかりに睨んでくる弥生は、「愛が足りないの!」とストレートに物申した。
よってハジメは複雑そうに額に手を当てる。
俺は俺でそろそろーっと歩み寄って来たココロが見上げてくるもんだから、その視線を受信。
ジーッと見つめてくる彼女に、ジーッと見つめ返し、見つめて、見つめ返して、見つめて、見つめ返して、彼女は両頬を包んで視線を逸らした。
な、なに? その態度。
遺憾なことに俺には一抹も伝わってこない。
視線の意味も態度の意味も見えてこないんだ。
ココロ、俺のために言葉のキャッチボールをしてくれないか? なあ?
「あのー、もしもしココロさん」
ビクッとココロは肩を震わせる。
視線を再び合わせたココロは、ポッポッと頬を赤く染めてなにやら俺に期待の眼を飛ばしてきた。
……何故だ、この言いようのないプレッシャーは。俺はなにを期待されているんだ。
とんでもない期待をされているような気がするような。