青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―


パタン―…、携帯を閉じた俺は一足先に倉庫に赴き地図帳を開いているところだった。
  
 
矢島をツイッターSTKして早三日。

ストーキングしたデータを元に奴の出没する分散図を作っていたんだけど、一目で分か
る。矢島の動きは定まらない、と。


ある時は駅に出現し、ある時はゲーセンに、ある時は早々に自宅に帰るという図になっているんだ。


え? 自宅までつけたのか? おうおう、付けましたよ。

だってストーキングだぜ?
荒川チームは徹底しましたとも!

犯罪者ギリギリのラインだけど付回しましたよ!


プライバシーの侵害はしているだろうけど、嫌がらせをしているわけじゃないからセーフだよな? な?!
 
 
閑話休題。 

規則性があればこいつの狙いはこれなんじゃね? って思えるけど、三日間のデータじゃなんともかんとも言えない。


敢えて言うならこの三日間、矢島と舎弟達が別行動を取っているってことだけど、それは学校外のことであって学校内では常にべったりなんだよな。あいつ等。


となれば、ツイートにもあがっていたように矢島が舎弟達に何かをさせているってのが筋だろう。

川瀬が隣町行きのバスに乗っていたの、俺、偶然にも見ちゃったし。


はてさて矢島は舎弟達にナニをしているのやら。



「響子さんはどう思います?」



本日のペアである響子さんに意見を求める。

響子さんはチームの頭脳派組としてよくリーダー達に意見している人だ。

俺以上に頭が回っているに違いない。


お局様(おつぼねさま)とペアになるのも事珍しいことなんだけど、折角の機会だ。響子さんと話し合ってみたい。


胡坐を掻いてその場にジベタリングしている俺の向かい側で、喫煙している響子さんは地図を流し目にして鼻を鳴らした。
 

「正直、相手の動きが読めないってのが率直な感想だ。
矢島はうち等を監視し、その都度里見達と連絡を取り合っているようだが…、奴等はやり方が一々まどろっこしいんだよな。

今回の一件もそうだ。隣町某17番地で何をしようとしてやがる」
 

ふーっと紫煙を吐き出し、響子さんはフロンズレッドの髪をくしゃりと撫ぜた。

里見達が強い私怨で“不良狩り”をしているのは目測できるし、これまで起こった事件にも滲み出ている。

憎悪にまみれた“不良狩り”は喧嘩とは程遠い行為だと響子さん。


潰すって表現が適切かもしれない、彼女はやや目を細め、宙を見つめた。


「里見は不良嫌いなんだろ?」


聞かれたから俺は頷く。

俺があいつ等に監禁されている時、里見や間宮はしきりに言っていたよ。不良は嫌いだって。
 
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