青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―


 
「ケイ」
 
 
舎兄が躊躇いもなしに俺の名前を呼んでくる。

強い意志が宿った呼び掛けに嫌でも察してしまう。


どうしようか、以心伝心できちまったよ。

ヨウがナニを考えて俺を呼んだのか、嫌でも分かっちまった。


「ちょっと待って下さいッス!」


俺が察したようにチームメートも察したのだろう。

すかさず舎弟のキヨタがその場に立ち上がり、それは幾らなんでも無茶があるのではないかと代弁役を務め、厳しく意見してくれた。


「リーダーの言いたいことは分かるッス。オトリの案も理解できるッス。
でもっ、だからってケイさんを指名するのは賛成できないッスよ。

分かってるんッスか? ケイさんの怪我の具合を。完治してねぇんッスよ!」
  

確かに。これでも肋骨にヒビが入っている男でありんす。

普通に自転車を漕ぐことはできても、喧嘩時に発動するフルスピードは出せないだろう。

つまるところ俺のチャリを宛てにしようとしても、本人が本調子じゃないため効力はいつもの半分くらいしか期待できない。

それを承知の上でヨウは俺を指名してくれているのだろうか?

 
―――…いや違うな。

ヨウのその眼を見る限り、チャリ使用の理由で俺を選んだわけじゃなさそうだ。

 
キヨタの意見に、「わーってる」俺も無茶させようとしていることは分かっているんだよ。無理言っているのも十二分に承知しているとヨウは返事した。

「ならどうしてっ」食い下がるキヨタに、「いっちゃん自然だからだ」リーダーが険しい面持ちを作る。


「俺とケイは日頃から共に行動していることが多い。ついでに矢島は俺中心に物事を見ている。常に傍にいたケイを重視していたしな」
 

思えば、ケイ偽者事件を起こしたのもケイが俺に一番近い存在だったからだ。

負傷したケイと俺が行動を共にすれば、あいつは何かしらの異変を感じるだろう。かの有名な荒川チームの舎兄弟が動き始めた。


それだけで矢島の興味を引くことになると思う。

自ずと向こうから手の内を明かしてくれるかもしれねぇ。


俺はこれ以上、あいつ等に好き勝手させたくねぇんだ。

今度はチームの誰が犠牲になるのか、そう思うことさえ疎ましい。


さっさと事に終止符を打ちてぇんだ。


異変に気付いた奴がどう動くのか、この目で確かめたい。


だから、


「ケイを指名してぇ。一番怪しまれない面子で、矢島が異変に気付きやすいコンビといえば俺達舎兄弟だから」
 

リーダーの気持ちに納得いかない面持ちを作るのは、代弁してくれているキヨタだ。

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