一途に IYOU〜背伸びのキス〜


ノックアウトされて、追いかけるどころか、きっと、立ち上がれなくなる。
……わかんないけど。

自分で思ってる以上に図太くて、嫌いなんて言わせたところで“それでも好き!”とか言って結局追い回しちゃうのかもしれないけど。


「はー……」


出るのは、ため息ばかり。
けど、何度吐き出したって、気持ちは全然軽くなんかならなかった。


ただぼんやりとしながら、道路を走る車のエンジン音ばかり聞いていた時。
ケータイが鳴った。

着信は……パパ。


「仕事戻ったんじゃないの? 社長の公私混同は困るんですけど」
『いや、戻ってないよ。
今日は家族で夕飯をとろうと思ってたから、有給をとったんだ。
朝話したろう』
「そうだっけ。忘れちゃった」




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