一途に IYOU〜背伸びのキス〜
交渉と条件


 ***


「え、料理教室? 咲良が?」


昼休み、パンの袋を開けたみっちゃんが驚いた顔で聞く。
あたしもママの作ったパンを頬張りながら頷いた。

今日のパンは、クロワッサン。
ママのパン作りの腕は、この1ヶ月ですごい上がったと思う。


「そう。会社の取引先の料理教室に通えって。
それが条件なんだって」



あの後、言葉通り、パパとママに“お付き合いのご報告”にきてくれた椋ちゃん。
うちに住んでた事もあるし、パパもママも椋ちゃんを気に入ってるのは、見ててもよく分かる。

リビングに上がった椋ちゃんに、パパたちも歓迎ムードいっぱいだった。
……椋ちゃんが、あの言葉を言い出すまでは。


『咲良さんとお付き合いしてるのは、ご存知かと思いますが……』
『ああ。もちろんだ。
この間は、それが嬉しくて久しぶりに飲みすぎたんだからな』
『その事で、ひとつ言い忘れた事がありまして』




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