一途に IYOU〜背伸びのキス〜



“また夜にね”
“また明日ね”

いつもならそう言ってるけど。
今はなぜだか言えなくて。

“今度”なんてあいまいな言葉だとは思うけど……。

せめてもの反抗だったのかも。


いつもと違う言葉を使ったあたしを、椋ちゃんが気にしてくれないかな、なんて。
どこまでも子供で、イヤになる。


振り向く事もできないまま、
椋ちゃんがどんな顔してるのかも分からないまま。

急いで部屋を出た。


エレベーターのボタンを押すとすぐにポンって音がして、エレベーターの扉が開く。
逃げるように乗り込んで1Fのボタンを押すと、6階からゆっくりと下り始めた。


「……椋ちゃんのバカ」


奥の壁に寄りかかりながら呟く。


「椋ちゃんのバカ椋ちゃんのバカ椋ちゃんのバカ」


待ってたのに。

一緒に祝いたかったのに。







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