甘い声はアブナイシビレ
「知穂ー!」
 知穂と待ち合わせたカフェに入ると、すでに知穂は一番奥のテーブル席に座っていて、カフェオレを飲んでいた。

「ゴメンネ、待った?」
「ううん。そんなに待って無いよ。…ごねんね、急に呼び出して」
 注文したアイスコーヒーを一口飲みながら知穂を見ると、さっきから躊躇って、言いかけた言葉を何度も引っ込めている。

「どうしたの、知穂?」
「えーと、ね…」
 ストローをクルクル回しては、また私の顔を見て、またストローを動かす。

 いつもハッキリ物を言う知穂が躊躇うなんて、何の話だろう…。
 なかなか話しださない知穂に変わって、私から龍一さんとの事を話した。

「知穂、あのね…」
「ん?」緊張した顔で私を見ると、一瞬視線をそらした。

「龍一さんの事なんだけど…」
 龍一さんという言葉を聞いて、知穂の顔はみるみる曇ってきた。

 さっきから、どうしたんだろう…。いつも明るい知穂が、元気が無いし、様子もおかしい…。

「私、龍一さんのこと…その…、好きになっちゃったみたい…」
 知穂と龍一さんは兄妹だ。
 もしかしたら、友達が兄とつき合うことは嫌かもしれない…。そう考えると、一気に緊張感が走る。
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