文系男子のその後。

なんか、こういう武道場って、変な独特の匂いするんだよな。
木の匂いと、よく分かんない不思議な匂い。
別に落ち着くから、良いんだけどね。

「……落ち着いて、話がしたかった」

「なんの」

加藤も同じなのか、と思いつつ、答えた。
スーツと普通の格好で立ったまま、道場の真ん中にいる俺らは変だろう。絶対。


「お前の父親についてだ」


「…………なんで、お前なんだ?」


ふう、と軽く息を吐くと、座った。
俺も同じ様に、座る。


「茜ーーー坂本が、いつ、幹部になったか、聞いたか?」


首を振る。聞いてない。

「……俺もよく覚えてねーんだけど、たしか二十歳になって無かった気がする。18,9くらいか」

「それが?」

「うちの組で初めて、こんなチビが幹部って役職を担ったモンだから、色々と揉めてな。けど、先代は『下のモンがこいつを選んだんだから、それを降ろすって事は、下の意見を無視するって事だ』つってあいつを下ろさなかった。まあ、その代わり、ベテランを幹部補佐に持って来た」

それが、お前の親父だ。

口を一端閉じて、俺を見る。

「優人。竹之内優人」

二度と口に出す事は無いと思ってた。

「……ああ、優人さんだ」

名前の割には大柄で、ガッチリしてて、ヒゲ面で、眉が太くて厳つくて。
クマみたいだった。
けど、中身は名前の通り優しかった。




気がする。


「だから、なんですか」

「そう結論を急ぐな」

話は最後まで聞け。

父親も同じ事を言っていた。

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