文系男子のその後。
「それで、だな。ある程度円滑に進んでたんだが、ある時村西に金が流れてる、って噂を聞いてなあ」
村西組は、此処、岡田組と恐らく最も仲が悪い組である。
任侠らしく筋を通す岡田と違って、村西はーーーアメリカのギャングに似ている。殺しや強奪、やるだけやって、そこには統制も何も無い。
「……まさか」
「優人さん、村西にいる幼馴染に幾らかやってたみたいでな」
自分のシマのーーーこの場合は茜のシマの金を少しだけ。
「でも、そんな事したら」
「あの人は、どう間違ったって、極道なんか入るべきじゃ無かった」
心の優しさに漬け込まれ、金欠の幼馴染に、半年も送ってたんだ。
その幼馴染、その貰った金をどうしてたと思う
「………」
首が重くなった気がする。
どうして血も繋がってない父親の話を聞かなければならないのか。
どうしてこいつはそんな話をわざわざ俺にするのか。
どうして俺は、こんなに胸が痛いのか。
「村西で昇進したいが為に、上に金を献上してやがった」
胴間声が、腹に響いた。
「皆、その事を知ってた。優人さんは、悪くない。騙されてたって、皆…分かってた」
けど、組織の金に手をつけたら、どうなるか。
「……それも、皆知ってたんでしょ」
「…………ああ」
その先を聞きたくなかった。
死んで、何年も経った今、知ったところでどうにもならないから。