必死こいて桜姫やってやんよ!






男物の着物、というより浴衣に近いその服は、所々シワになり片方ずりさがって微妙に肩が露出している。



桜をモチーフに書かれたそのデザインは裾に向かって黒地から白地に変わっていき、同じく裾に向かってだんだんと広がる様にしてある。

桜はそれらによく映え、若干の乱れが更にそれを強調していた。




「…、」


「言え」


「…自分だよ」




嘘は言っていない。


ちゃんと鏡でチェックしてきた。



きちんと直すのは面倒だし、はしたなくならない程度にそのままにして。


同じく髪もそのまま。




「じゃあ何でお前じゃない匂いがここについてる」


「…ん?」




唇に冷たい指が触れる。




「それはいろんな人と話してたから…」


「だからってここに付くかよ。
言え、本当の事」


「……」


「音寧々」




鋭くあたしを見透かす目。




「…今はまだ、言えない。
ってゆーか名前も知らない」


「本当か?」


「うん。
変装もしてたし」


「…分かった」




ごめん憂依。



真実はまだ。



知っているのはあたしとカズだけでいい。







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