【短】カラフルな恋物語
ある一点に注いだあたしの視線を追って、彼がやっと気づいた。
もう一度、ランプが点滅したとき。
彼はあたしの顔を恐る恐る見る。
「 …いいよ」
あたしがそう言うと、彼はためらいがちにケータイをとった。
―― それは、最後の賭けだった。
「今までありがとう」
彼に引き止められることができないくらいの速さで、あたしは部屋を出た。
とうぜん、ぱたりと閉めたドアが開かれることはなかった。