手の中にある奇跡
出逢い
開店時間になり、ご予約のお客様が何人か、来店される。

この店は基本、予約優先だから、新規さんが来る事はそんなにない。
1日をご予約のお客様で埋まるぐらいなのだ。
リピーター率はかなり高い。それに常連のお客様の紹介などが意外に多い。
私も昼から、ご予約のお客様でぎっちりだ。

空いてる時間に雑用などをこなしている。

今は、何か新しいイベントやサービスを考えている。

「橘、ちょっと」

店の入り口で手招きしている店長に呼ばれ外に出ていく。

「何かありました?」

駐車場の掃除は担当のスタッフがしたはず、窓拭きだって、そんな事を考えながら キョロキョロしていると、駐車場にベンツが入ってきた。

あ~お出迎えってやつですね。と心の中でつぶやいた。

車から、マネージャーと…例の川之江社長が降りてきた。

柳店長から緊張が伝わってきた。

「多分、社長もマネージャーと一緒でポンポコたぬきですよ。」

私の言葉に軽く微笑して、頷いた。

「おはようございます。今日は、お忙しい中、足を運んで頂きありがとうございます。」

店長の挨拶と同時に頭を下げた。

すぐに、マネージャーに視線を送れば、爽やかな笑顔が帰ってきた。

社長と店長は2人で話ながら、店に入っていく。

「今日は機嫌がいいんだね~♪」

「おはようございます。笠原マネージャー。今日は早く帰れそうなので嬉しいんです。」

嫌味たっぷり言ったつもりでも、毎回、マネージャーには通用しないのが悔しい!

「残念!今日は嬉し恥ずかし時間外労働だよ♪」

この、たぬきめ!!と心の中で毒つく

「その心は?」

「【ロナーニョ】で素敵なディナーにご招待♪今日は両手に花だよ、橘ちゃん♪」

良い響きは【ロナーニョ】のみ!!
アソコのイタイアンは食べたい!!

「…時間外労働…では仕方ありませんね…」

「良かった~、橘ちゃんに断られたら社長と2人きりだったよ~社長の奢りだから、好きなだけ食べて、飲んでいいからね!」

【ロナーニョ】はきっと私を釣る餌に過ぎないんだ!なんて良い餌なんだ。

そんな事を考えながら、店長に断らないとと考えながら店に入っていった。


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