手の中にある奇跡
午後
休憩も終わり、予約のお客様を迎える為に部屋の準備をしていた。

部屋の中でアロマを焚いたり、BGMの用意をする。

部屋の時計を見ると、そろそろ金山様がご来店される時間

一階に降りて入口に向かおうとすると店の扉が開き、金山様の姿が目に入った。

「いらっしゃいませ、金山様」

笑顔でお迎えすると
「穂香ちゃん♪よろしくね。」

と可愛らしい笑顔で答えて頂いた。

金山 静香さんは私が【Y's】に着て、初めて施術を担当したお客様。

それから、指命して頂いている。私を子供の様に可愛がって下さっている。
「では、お着替えお願いします。」

「はいはい♪」

普通はここで出て行くのだけれども、金山様は引き留める。女同士なんだからと言う理由で…私は棚のタオルなどを準備しながら、着替えを待った。
「穂香ちゃん、急なんだけど夜空いてる?」

服を脱ぎながら話す金山様に背を向けながら、夜は時間外勤務の事を思い出した…

気が重い…

小さくため息をはいた

「申し訳ありません。今日は用事がありまして…」

「また、笠ちゃん?」

金山様のいう“笠ちゃん”は笠原マネージャーの事。

実は金山 静香さんは川之江グループと取引のある、美容関係の会社の社長様だったりする。美容部門の笠原マネージャーと面識があるのは当たり前なのだ。
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