傲慢彼女のラプソディー


誰が声をかけたのか疑問に思いながら、振り向くと、吉昭の体に電流が走る。


ストレートの長い黒髪。少しつり上がった二重瞼の大きな瞳。色白でスッとした体系はまるでモデルのようだった。


これが俗に言う一目惚れか、と吉昭は思ったが、その考えはすぐに打ち消した。
吉昭は彼女を一度見たことがあった。


写真部に所属している吉昭は、先輩に学校内で撮った写真のアルバムを見せて貰った。そこに彼女が写っていたのだ。
楽器を持って演奏している写真だった。
音楽系統に疎い吉昭は彼女が演奏している楽器が分からなかったが、写真からでも伝わる美しさに圧倒されたのは覚えている。

吹奏楽部の演奏会で、彼女の姿を探してみたが、全く見当たらないので、もう既に卒業したんだ、と自分の中で結論付けていた。



しかし、彼女はまだ在学生だったのだ。



「あ。」


「え?」


彼女が急に呟いたので、吉昭は反射的に聞き返してしまう。
驚きや戸惑いなどで、正直まともに話せる状態ではないのだが。



「ねぇ、ティッシュ持ってない?」



「すみません…持ってま……」



いつも持ち合わせてないので、つい所持していないと口走る。
しかし、そこまで口にしたところで、朝にラッキーアイテムであるポケットティッシュを鞄の中に閉まったことを思い出す。




「いや!やっぱあります!ありました!」

「あ、そう……。貸してくれない?」




慌ただしく鞄から取り出し、どうぞ、と言って彼女にティッシュを渡す。
あまりにも吉昭が必死だったので、彼女は少し引き気味のようだ。
彼女はどうも、と小さく呟き、渡したティッシュで鼻を咬んだ。



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