14日の憂鬱
カサカサの唇と取り残された心
永井の唇はかさかさだった。




ドキドキと、心臓が自分のそれじゃないように激しく鳴り続けていた。





すぐ前にいる永井にまで、この音が聞こえてしまいそうで恥ずかしかった。


時間にすれば大して長くない時を、何倍もの長さに感じていた。



唇がふと離れて、お互いゆっくりとまぶたをひらく。



私も永井も、顔が赤いのは西日のせい?





キスのせい?





『……永井』



ところが、そんな甘い時間が、私が彼の名前を呼ぶことで壊される。





『あ……』




私に名前を呼ばれた途端、彼の目はひどく驚愕した様子ですぐに顔を逸らしてしまった。





『さ、とう……』


『……?』


『……ゴメン』


『え……』







『悪かった……』









永井はそう言い残して、私を残して走り出す。




未だに冷静になれない私を残して。


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