14日の憂鬱
「……で。実際どうなの?」




誰もいない教室。




永井が私の体を後ろから包み込み、二人で机に腰掛ける。



頭上にある彼の顔を覗いた。




「あ? 俺? 俺は一つも貰ってねぇ」


当然でしょと、言う。




「ふーん……」


「美奈は?」





さりげなく、彼は私のことを「佐藤」から「美奈」と呼ぶ。


そういえばさっきは興奮してたから聞き逃したけど、ちょっと前も「美奈」って呼んでくれたことをふと思い出す。




「え」




えーっと……。




野球部恒例の義理チョコ渡しは、カウントされるのかな。






「その顔は……あげたな」




「で、も。野球部恒例のやつだし」



「俺は義理の一つも受け取らなかったけど」





ちょっと待ってよ。



だって、私。



みんなに渡す前に教室来たから、実際は渡してないよねぇ。






「やややっ。渡してないよっ?」




「そんなに慌てるってことは渡したんだろ」



「違うよ~っ!渡してないよぉ」




「じゃー、俺には無いの?」





にっこりと笑いながら永井は顔を私の肩へ置いた。


「……それは……」







無いよ。


だって……好きだって認めたくなかったんだもん。






「無いの?」



「……ごめん。無い」





私が申し訳なさそうに答えると、永井はクスクスと笑って







「……じゃー、チューして?」



聞いたこと無い甘えた声でそう言った。




永井って、こんなキャラなんだ。






みんなの前では硬派だけに、私にしか見せないその表情が可愛くって仕方が無かった。





なので。


恥ずかしかったけど、その愛しい頬へ軽くキスをした。






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