俺はお前だけの王子さま~ヒロキと加奈子~
そんな俺の言葉に親父は小さく笑った。


「遠慮はしてないんだけどな」


親父は冷やし中華に箸を通した。


「母さんが出て行ってから恋の仕方を忘れてしまったみたいなんだ」


「…………」


俺は冷やし中華を食べる親父を見た。


そんな視線に気付いたのか親父はもう一度小さく笑った。


「情けない親父ですまんなぁ。お前もそろそろちゃんとした手料理も食べたいよな。」


「…………別に」


それから俺と親父は

野球中継のTVに時折、親父が反応するくらいで


いつも通り無言で飯を食べた。













―――翌日


俺は5日ぶりに外に出かけた。


特に行き先は決めてなかったけど…


俺は気付くと高校に来ていた。


「女々しぃ…」


ダサい自分に笑えてくる。


俺は、この5日間


ただ加奈子ちゃんに会いたくてたまらなかった。


親父と話したせいとかじゃないけど昨夜はついに加奈子ちゃんの夢まで見た。


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