ドッペルゲンガー
その頃、海斗は頭の中を整理していた。


「そういや、かあちゃんがオレには一時期手をつけられないほど、荒れた時期があったとか言ってたな。」


海斗はそのときのことを何も覚えてないのだ。


「空白の一ヶ月とはそのことかもしれないな。
それに、トミーの親父はオレをトミーだと思ってやがる。他人の空豆ってやつだな。」


「それを言うなら、他人の空似だろうが。」


と、後ろから聞き覚えのある声がした。


「おぉ、誰かと思えばトミーじゃねぇか。お前大変だったんだぞ。」


トミーは起き上がると、海斗のそばにある茶封筒を指差した。


「おい、それ。その中の写真はちゃんと処分したか?」


「はっ?ってか何なんだよこの写真は?」


「あぁ、言ってなかったっけか。オレの親父だ。去年、事故で死んだ。」


トミーはあっさりと白状した。


「でも、お前の親父さんはまだ魂だけでさまよってるぞ?
だいたいなんで写真なんかに。」


「詳しくはオレも知らん。ただ、その封筒を見たとき何か黒いもやが見えた。
だからオレは破った。
まぁ、間に合わなかったがな。」


黒いもや?早くも意味不明なことをいうトミーに、また何かにとり憑かれてるんじゃないかと疑った。


「しかも、オレのことを息子だと言い張るし。
自分の息子ぐらい覚えとけよって話だぜ。」


「残念だがオレが親父と最後に会ったのは、オレが物心つくまえだ。
それからは一度も会ってない。
だから、お前と間違うのも無理はない。」


海斗は、トミーも自分と同じ境遇で育ってきていたことに驚いた。
海斗の父親は海斗が物心ついたときにはもう亡くなっていた。
つまり、二人がグレた原因は全く同じだったのだ。
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