俺様婚約者~お見合いからの始まり~
「百合子?」

彼がさらに顔を近付けて私の名前を呼ぶ。

涙が滲みそうな目を上げて彼の目を見る。

「…どうした?何で泣いて…」

話している彼の唇にそのまま自分から口づけた。

「………!」

彼は唇を硬くして驚いている様だ。

私はもう、そんな悠斗に構わず彼の唇の形や感触を自分の唇で確かめる様に表面を優しくなぞっていった。

うっすらと目を開けて悠斗を見ると、彼は動かず固まったまま目を開けて、そんな私を見ていた。

…何よ、…。

人をバカにして。

私が相手だとキスにも応えてくれないの…?

お互いに目を開いたまま、私は彼の唇をなぞり続けた。

「……」

「……」

悠斗はキスに応えてはくれないけれど、抵抗もしない。

…試されてるのかな…?

…何を?


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