俺様婚約者~お見合いからの始まり~
見つめ合う私達の隣で『支配人』だとかいうおじさんが「?」という顔をしている。

「…あの…、澤乃井様?」

そう言って明らかに怪訝そうな顔をして私を見た。

「あの、お客様、ご用なら受付フロントにて給りますので…。」

まるで私が怪しいみたいにあちらへ行けとばかりにフロントの方を手で案内する様に指し示す。

「あ、いえ…、私は…」

私はこの『澤乃井様』に用があるのよ!、おじさん!

そう言いたいのをぐっと堪える。

バカにされた様でムカムカする。

全く、この男と一緒にいると何でこう、イライラさせられるのかしら。

すると悠斗が私の肩に手を置いて自分の方へぐっと抱き寄せた。

…ちょっと…!

「支配人、この女性は私の婚約者です。無駄なお気遣いは無用ですから。」

…ええっ?!

涼しい顔して何言ってんのよ!

「…は…?…こ、これは失礼致しました!
ご婚約なさったとは存じ上げませんでしたので…!」

おじさんは額にうっすらと汗を滲ませながらペコペコと私達に頭を下げた。

いや、そんなに謝らなくてもいいって…。

だけど、この肩に置かれた手はどうしたらいいの?

私が悠斗をちら、と見上げると彼は昨日、うちの母に見せたのと同じ笑顔で笑いながら「いえ、いえ」と言っている。



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