それはたった一瞬の、


何その優しい強要口調。


父さんはまだ洗面所から出てこない。

このハゲ親父、愛娘が困ってるって言うのに!

「付いてきて下さい、藍火様」

「えぇー…?」

どうする私。

急がば回れ?冷静沈着?

そんなもん知るか。

私はあの父さんの血を継いでるんだ。


「…わかった!」


この選択が吉と出るか、凶と出るか。

踏み出した一歩は、初夏の爽やかな匂いがした。


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