シャボンの国 -the land of soap bubbles-

「…人間界ではシャボン玉はすぐに消える物として知れ渡っている。それをわざわざ触ろうとする人間がどれ程いるかはわからん…。だが、もしお前が一万回人間に触れられ、その者の願いを叶える事が出来たのなら…。その時はまた戻ってきなさい」





どこか絶望的にも思えるその条件を否定するわけにはいかなかった。



もとより、そんなつもりはないし、それに何よりそれが父の優しさだとわかっていたから。





「…わかりました」





そう言葉を落とせば立ち上がった父が近づいてくるのが見える。



その手から光が放たれ、それを受ければ身に纏っていた衣服が白から黒に変わるのが見えた。



髪が黒に変わったのも。