恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~
4月。


デイゴの花が燃えるように赤く、満開になった日。


海斗と葵ちゃんは与那星島を出て、那覇へ渡って行った。


春の夕日に染まる浜のガジュマルの木の根元に隠れて、美波ちゃんが泣いていた。


「今年も陽妃と同じクラスさ!」


「やった!」


「わんもB組やさ。嬉しいかね」


「「え……別に」」


「いいさ、分かってるさ。素直じゃねーらん、まったく」


「さて、行こうかね、陽妃」


「そうだね」


「エーエー! ちょっと待ちなっさー!」


あたしたちは高校3年生になり、美波ちゃんは小学4年生になった。


少しずつ変化が起き始めたのは深紅色の花が散り始めた頃。


「夢、なんだってさ。デイゴの花言葉」


それを教えてくれたのは、また少し綺麗になった里菜だった。


「わんたちもそろそろ真剣に考えんといけなくなって来ちゃん。卒業後のこと」


「うん……里菜は? どうするか考えてる?」


「まあ、はっきり決めたわけじゃねーらんしがね。一応さ」


「そうなんだ」


「わんや美容師目指そうかと思って」


「え、すごいじゃん」


「やしが、まだ分からんよ。決めたわけじゃねーらんからさ」


みんなが、未来を見つめはじめていた。


「夢?」


「うん、そう。悠真の夢。アイドルとかそういうんじゃなくて。現実的な。卒業後のこと」


「あぁそれか。まあ、やりたいこともねーらんし、とりあえず店手伝おうと思ってるんだしさ」


悠真の家は与那星島で唯一のタコライス店を経営している。


「えー。悠真までちゃんと考えてるの? 嘘でしょ」


「何さぁ失礼だねー。どうせ大学行くような頭じゃねーらん。店手伝って気が向いたら調理師免許でもとるさ」


「そっか。悠真のお父さんのタコライス、めちゃうまだもんね」


「まあね」


いつまでも楽しい高校生のままでいることはできない。


みんなそれぞれ、将来のことを真剣に考えはじめていた。

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