恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~
「帰ろう。陽妃」


「うん」


まるで、その行為が当たり前のように、あたしは海斗の手に自分の手を重ねた。


海斗の手は、相変わらずひんやりしていた。


「ねえ、海斗」


「何か?」


「今度は美波ちゃんも誘って、また来ない?」


えっ、と海斗がしかめっ面をした。


「嫌なの?」


「……嫌じゃあないけど」


「けど?」


「美波いはうるさいー。ゆっくりできんさ」


「いいじゃない。あたし、美波ちゃん好きだけどなあ」


「陽妃は美波いのおてんばを、まだ分からんからそんなことが言えるのさあ」


あたしと海斗は、ひたすらしゃべり続けながら、白く輝く道を歩いた。


たそがれ色の空に、まあるいお月様が輝いて見えた。


その日から、夕方になると浜へ散歩に繰り出す事が、あたしと海斗と美波ちゃんの日課になった。


慣れない島の生活の中、夕方の散歩はあたしの癒やしのひとときになった。


海斗と美波ちゃんと居ると、不思議なほど心が安らいで穏やかだった。


けれど、穏やかな日々は長くは続かなかった。


絶対にしてはいけない事を、あたしはしてしまった。


たった一本の連絡。


それがきっかけだった。


あたしは取り返しのつかないことをしてしまった。


島の掟を、簡単に破ってしまったのだ。










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