恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~
あたしはゴクリと音を立てて、息を飲み干した。


覚悟はしていたはずなのに。


あたしはバカか。


なんて単細胞にできた頭なんだろう。


『ねえ、聞いてる? 陽妃? 大丈夫?』


この島へ来てから、けっこう楽しくて、思ったより本当に楽しかったから。


いつも考え込む直前に、まるでその瞬間を見計らったように、海斗が現れていたから。


だから、大我のこともひかりのことも考える暇なんてなくて。


だから、忘れかけていたのに。


あんなに大好きだったはずなのに。


でも、真衣の次の一言で、あたしの心はぐちゃぐちゃに乱れ始めた。


『それでね、ひかり……学校辞めるみたい』


「えっ、なんで?」


噂なんだけど、と前置きをしてから真衣は言った。


『妊娠……したらしいよ。大我の子供だって』


妊娠……?


その瞬間、一気に体の力が抜けて、あたしは床に座り込んだ。


心臓が不快な音を立てて暴れる。


「妊娠? 本当なの、それ」


必死に振り絞った声が、うわずってしまった。


「だって、噂なんでしょ?」


窓の外をふと見上げたら、今にも泣き出しそうな鉛色だった。


『でも……ふたりとも突然学校来なくなってさ。番号も変えたみたいでね。何度かけても繋がらないんだよね』


もう、返す言葉なんてひとつも見当たらなかった。
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