恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~
『うん?』
「あの、ごめんね。お母さんに頼まれてた用事があって。また連絡するから」
それが嘘だってことは、真衣はきっと分かっていたに違いない。
あたしの声はうわずり、完璧に震えていた。
『分かった。じゃあ、切るね。元気だして、陽妃』
「あ……うん」
『……うん』
なんてよそよそしい会話なんだろう。
「じゃあね」
あたしは急いで電話を切った。
ひかりが大我の子供を、妊娠してしまった。
噂だって言ってたけど、そういうたぐいの噂はたいがい当たる。
目の奥で、ふたりが体を重ねる光景と、幸せに笑う光景がごちゃ混ぜになって、ぐるぐる回る。
あたしは愕然としながら、床に座り込んだ。
ショックは計り知れないほど大きくて、立ち上がれなかった。
海斗が、いつものように浜へ行こうと誘いに来る夕方まで、1センチたりとも動かなかった。
「ごめんね。今日、行かない」
散歩を断ると、海斗はシュンとして両肩を落とした。
「ちょっと体調良くなくて。風邪ひいたのかも」
ケホ、といかにもわざとらしい嘘の咳をした。
「そんなら仕方ないよ。治ったら、また行こう。今日は美波と行って来るさ」
にっこり笑って帰って行く海斗の背中を、あたしは最後まで見送ることができなかった。
「ごめん、海斗」
あたしは部屋に戻って、薄っぺらいスマートフォンを握り締めて膝を抱えた。
「あの、ごめんね。お母さんに頼まれてた用事があって。また連絡するから」
それが嘘だってことは、真衣はきっと分かっていたに違いない。
あたしの声はうわずり、完璧に震えていた。
『分かった。じゃあ、切るね。元気だして、陽妃』
「あ……うん」
『……うん』
なんてよそよそしい会話なんだろう。
「じゃあね」
あたしは急いで電話を切った。
ひかりが大我の子供を、妊娠してしまった。
噂だって言ってたけど、そういうたぐいの噂はたいがい当たる。
目の奥で、ふたりが体を重ねる光景と、幸せに笑う光景がごちゃ混ぜになって、ぐるぐる回る。
あたしは愕然としながら、床に座り込んだ。
ショックは計り知れないほど大きくて、立ち上がれなかった。
海斗が、いつものように浜へ行こうと誘いに来る夕方まで、1センチたりとも動かなかった。
「ごめんね。今日、行かない」
散歩を断ると、海斗はシュンとして両肩を落とした。
「ちょっと体調良くなくて。風邪ひいたのかも」
ケホ、といかにもわざとらしい嘘の咳をした。
「そんなら仕方ないよ。治ったら、また行こう。今日は美波と行って来るさ」
にっこり笑って帰って行く海斗の背中を、あたしは最後まで見送ることができなかった。
「ごめん、海斗」
あたしは部屋に戻って、薄っぺらいスマートフォンを握り締めて膝を抱えた。