恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~
「ばかみたい……大げさよ」


迷信にすぎない。


こんな、たかが1本の木で人生を左右されたら、たまったもんじゃない。


ばかみたい。


災いなんて、起きるわけがないのに。


「くだらない」


放心状態のまま、あたしは薄笑いさえ浮かべながら家路についた。


雨に打たれながら、無心で歩いた。


歩き続けていると、次第に雨が上がり、夕方独特の陽射しがさした。


でもそれにすら気づかないふりをして、何かに取り憑かれたようにあたしは歩き続けた。


白い、砂まみれの足で。


海斗の家の裏まで来ると、玄関先の花に水やりを終えたばかりのおばあちゃんとはち合わせになった。


雨で濡れたままの、まるでリングの貞子みたいな髪の毛。


毛先からぽたぽたと水滴が落ちて、地面に水玉模様ができていた。


「びしょ濡れじゃないかー。雨に打たれたんかあ。雨ぬ中、どーこほっつき歩いてたぬさ」


あたしは無視した。


誰とも話をしたくなかった。


あたしの足を見て、おばあちゃんの目が光る。


「浜に行ってきたんか?」


何も答えないあたしに、


「風邪引きたいんかー。ばかもん」


フン、と鼻を鳴らして、おばあちゃんは腰を曲げたままスタスタと家の中へ入って行った。


なんだか、歩くのも嫌になってきた。


しばらくその場に立ち尽くしていると、右方向から、何かが落ちてはじける音がした。


ガチッ。


プシューッ。


ゆっくり顔を上げると、金色の陽射しを受けて、唖然顔の海斗がそこに立っていた。


「はる……ひぃ?」
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